製品画像

光ファイバケーブル
基礎知識

 

Ⅱ-24J1063-014

光ファイバについて

光ファイバは、離れた場所に光を伝える繊維状の光導波路です。通信用として銅線よりも優れた性能を有しています。

図(1)は、一般的に広く使われている通信用石英ガラス系光ファイバの構造図です。中心にコアと呼ばれる光を伝える部分があり、その外側に光を外に漏洩させないためのクラッドと呼ばれる部分があります。コアにはゲルマニウムを添加し、クラッドよりも屈折率を高くしています。これにより光をコア近傍に閉じ込めることができます。またクラッドの屈折率を低くするためにフッ素などを添加したものもあります。クラッドの外側には、柔らかい被覆材の一次被覆、その外側に硬い被覆材の二次被覆があります。被覆を二層にすることで石英部分を外傷から保護しつつ、曲げやすさを持たせています。

光ファイバは銅線と比較して、①細径かつ軽量、②電気的なノイズや干渉を受けにくい、③伝送損失が非常に低いため長距離伝送が可能、④光のパルス幅を非常に狭くできるため(ON/OFFを高速に切り替えることができるため)高速大容量の通信が可能、といった特徴があります。

(1)通信用石英ガラス系光ファイバの構造図

光ファイバの種類について

光ファイバは大きく通信用と特殊用に分かれます。

✓通信用について
通信用には、シングルモード光ファイバ(SMF)とマルチモード光ファイバ(MMF)があります。SMFは、低損失かつ光パルスの形状が歪みにくいという特徴があるため長距離大容量伝送用に向いています。一方、MMFは、モードによって速度が違うことでパルス形状が歪やすいという欠点があるものの、大口径のため使用する光源や機器を安価に設計できるというメリットがあり、短距離伝送(LANケーブルなど)に使用されます。SMFには、曲げ損失特性を向上させた低曲げ損失光ファイバもあります。

以前は外径250μmが主流でしたが、ケーブル細径化の要求により現在では外径200μmのものも広まっております。

他にもコアにゲルマニウムを添加しないシリカコア、フォトニック結晶や、1本の光ファイバの中にコアが複数あるマルチコア光ファイバ(MCF)などもあります。MCFを用いた光ファイバケーブルは通常のSMFよりも細径にできる、というメリットがあります。

✓特殊用について
特殊用には、センサー用、イメージファイバなどがあります。センサー用には、光ファイバジャイロや、ひずみや温度計測に使用される偏波保持ファイバ(PMF)などがあります。

図(2)は偏波保持ファイバ(PANDAファイバ)の断面図です。コアの両側に配置した応力付与材によりコアにストレスを加えることで複屈折を誘起します。通信用で使用する光の波長域は狭い範囲に限られておりますが、特殊用で使用される光の波長域は非常に広範囲であるため、各波長に対応したPANDAファイバがあります。

(1)光ファイバの種類

(2)偏波保持ファイバ(PANDAファイバ)の断面図

光ファイバケーブルについて

光ファイバケーブルとは、光ファイバ(光ファイバ心線、光ファイバコード)を束ねて、シースと呼ばれる保護被覆を施したケーブルです。光ファイバケーブルは通信用として用いられ、AIやIoT(Internet of Things)の進化を支える情報通信インフラの実現に必要不可欠となっています。

図(1)は、細径高密度型光ファイバケーブルの構造図です。フジクラの光ファイバケーブルは、柔軟に変形することができる間欠接着テープ構造 Spider Web Ribbon® (SWR ®)とそれら束ねて高密度に収納したWrapping Tube Cable®(WTC®)を用いています。光ファイバユニットをラッピングチューブで包み、その外側にシースを被せる構造となっております。引張強度を持たせるためのテンションメンバや被覆を容易に切り裂くための引き裂き紐なども組み込まれています。

(1)細径高密度型光ファイバケーブル構造図
(フジクラ製)

光ファイバリボンについて

光ファイバリボンとは、複数本の光ファイバを平行に並べて接着したものであり、平面的に光ファイバが配置されたリボン状の構造となっています。

光ファイバリボンには、光ファイバ同士が全面的に接着しているものや、間欠的に接着しているもの(間欠接着や間欠固定と呼ばれている)などがあります。図(1)はフジクラで採用している間欠接着型の Spider Web Ribbon® (SWR®)の構造図です。間欠接着型は、①多心一括融着接続が可能、②容易に単心光ファイバに分離することができる(工具不要)、③容易に変形することができるため高密度実装ができる(図(2))、といった特徴があります。現在の細径高密度光ファイバケーブルの多くで、間欠接着型が用いられています。

(1)間欠接着型光ファイバリボン
(SWR

(2)容易な変形

光ファイバケーブルの種類と用途

光ファイバケーブルは大きく屋外用と屋内用に分かれます。また屋外用には鳥獣虫害対策の外装付きもあります。

✓光ファイバケーブルの構造について
光ファイバケーブルの構造は大きく分けて、①ルースチューブと呼ばれる樹脂チューブを使用するタイプと、②ルースチューブを使用しないタイプに分けられます。右図はルースチューブを使用しないタイプで、光ファイバが非常に密に詰まった細径高密度型になります。リボンと呼ばれる複数本の光ファイバを平行に並べて接着したものを束ねており、多いものでは6912本の光ファイバが実装されているものもあります。高密度ケーブルでは、光ファイバ同士の接着方法として間欠接着型(間欠固定型)を用いたものが主流となっております。光ファイバケーブルには敷設時、敷設後に大きなストレスがかかります。もし内部の光ファイバに過度なストレスが加わると、最悪の場合、断線する危険もあります。そのために光ファイバケーブル内にはテンションメンバが入っています。テンションメンバの材質は、一般的には鋼線が用いられますが、ノンメタリックではFRP(繊維強化プラスチック)などが用いられます。

✓屋内用と屋外用について
右図の(1)は屋内用、(2)は屋外用、(3)は外装付き屋外用となります。一般的な特徴として、屋内用のシースには難燃材が用いられており、一方、屋外用には高い引張強度を持つテンションメンバや支持線が用いられています。なお図(2)にある表面の突起は引き裂き紐の位置を表しています。

✓ノンメタリックについて
金属を全く使用しない光ファイバケーブルはノンメタリックと呼ばれています。ノンメタリックは、布設時の接地や、誘導の問題を考慮する必要がありません。

✓外装付きケーブルについて
外装付きケーブルは、光ファイバリボンの周囲を金属テープで覆い、その外側にシースを施した構造のケーブルです。鉄道線路沿いや機械強度が求められる環境で使用されます。また鳥獣害(キツツキ、ネズミ、リスなど)からも光ファイバを保護します。なお外装(金属テープ)は、内部にある引き裂き紐で容易に除去することができます。

✓空気圧送型ケーブルについて
光ファイバケーブルをダクト内に敷設する作業において、空気圧送工法を用いることで工期を大幅に短縮することができます。そのために開発されたのが図(4)の空気圧送型ケーブルです。ダクト内壁との摩擦力を低減させるために、シースは特殊な形状をしています。

✓”ケーブル”と”コード”の違いについて
”ケーブル”の他に”コード”という呼び方もありますが、一般的には、コードは単心の光ファイバにシースを被せたもの、ケーブルは、複数本の光ファイバ心線を束ねてシースを被せたもので、ケーブルはコードより複雑な構造をしています。片端もしくは両端に光コネクタが付いたコードは”パッチコード”と呼ばれています。コードを束ねてシースを施した”ケーブル”もあります。

(1)

(2)

(3)

(4)

ルースチューブ光ファイバケーブルについて

ルースチューブ光ファイバケーブルは、ルースチューブと呼ばれる樹脂製チューブの中に光ファイバ心線を実装したケーブルです。

図(1)は一般的なルースチューブ光ファイバケーブル構造図です。中心にテンションメンバーがあり、その周りに光ファイバ心線が入ったルースチューブが配置され、さらにその外側にシースが施されます。多くのルースチューブでは、内部にジェルを充填しており、光ファイバにかかるストレスを抑制しつつ、水の侵入も防いでいます。
この構造は、伝送損失を低く抑えることができる一方、光ファイバを高密度で充填することができないため、細径化しにくい、という欠点があります。
現在では、ルースチューブを使用せず、高密度に実装しても伝送損失が低い “間欠接着型光ファイバリボン” を用いた細径高密度型が主流になりつつあります。

ルースチューブケーブル

(1)ルースチューブケーブル構造図

光ファイバケーブルの敷設方法について

光ファイバケーブルを敷設する場所は、大きく分けて①地上、②地中および③海底です。

世界的に多く採用されている敷設方法は、地中にダクト(もしくはマイクロダクト)を敷設し、その中に光ファイバケーブルを挿入する、という方法です。光ファイバケーブルをダクト内に挿入する方法は、①ワイヤーで光ファイバケーブルを引っ張る方法と、②空気圧で光ファイバケーブルを送り出す方法の2つがあります。以前はワイヤーで引っ張る方式が主流でしたが、最近では、空気圧送法が主流になっています。その主な理由としては、①空気圧送法の方が施工時間が短い、②すでに光ファイバケーブルが敷設されたダクト内に追加で光ファイバケーブルを敷設することが容易、といったメリットがあるためです。

光ファイバの接続方法

光ファイバの接続方法は、①一旦接続すると外すことができない着脱不可タイプと、②着脱可能タイプの2つに分かれます。

着脱不可タイプは、融着接続とメカニカルスプライス接続があります。また着脱可能タイプは、挿抜が自由にできる
光コネクタ接続となります。さらに光コネクタ接続は、製造方法によって現場組立と工場加工に分かれます。

✓各接続方法について

①融着接続 
アーク放電により光ファイバを溶かして接着する方式です。 融着接続機などの機器を必要としますが、接続損失は非常に低いです。 接続後に融着接続機により接続損失を推定するため確実性が高いです。 
【主な使用場所】
    外線の成端、国内のパーマネントリンクなど

②メカニカルスプライス接続
素子内で光ファイバ同士を物理的に突き合わせて接続する方式です。接続損失は高いものの、簡単な工具で接続ができます。 
【主な使用場所】
    局舎内の応急復旧、FTTHの接続など

③光コネクタ接続
光ファイバ端末に取り付けた光コネクタ同士を篏合させて接続する方式です。接続損失はやや高いものの、工具を使用せずに接続することができます。 そのため短時間で施工できます。光コネクタにはたくさんの種類があり、単心コネクタとしてはSCコネクタ、LCコネクタ、MUコネクタ、FCコネクタなどがあります。また多心コネクタとしてはMPOコネクタがあります。最近ではMPOコネクタよりも小さいMDC/MMCコネクタも実用化されています。
【主な使用場所】
 単心コネクタ:責任分界点、クロスコネクトポイントなど
 多心コネクタ:大規模クラウドのリーフスパイン構成など

(1)光ファイバの接続方法

(2)SCコネクタ

(3)LCコネクタ

(4)MPOコネクタ

(5)MMCコネクタ

ご質問などございましたら、お気軽にお問い合わせください。